友の悲しそうな顔は嫌。

タエは自分自身にそう言い聞かせて、スッと息を吸い込んだ。

「あたしはタヌキだけど。でも、人間のあなたを好きになってもいいですか?」

声は震えてとても情けなかった。

小さすぎて目の前にいる友にも届かなかったかもしれない。

でも、タエは勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えたのだ。

そしてそれはちゃんと友の耳にも届いていた。

「本当に?」

友が目を見開き、タエを見つめる。

見つめられたタエはまた真っ赤に染まって俯いた。

「でも、あたしはタヌキだから!」

タヌキと人間が付き合うなんて、神様が許さない。

ただのタヌキならまだしも、タエはすでに化け物や妖怪と呼ばれるものになっているのだ。