この海岸でのプロポーズも、遠くから見ていたのだから。

「この帽子は今度はタエちゃんが持っているべきだと思うの」

「どうしてですか? これ、大切なものですよね?」

「そうよ。だけどこの帽子は一度私の元から離れているの。その時はマミちゃんが持っていたわ。そしてまた戻ってきて、今度はタエちゃんが持つの。きっと、この帽子必要な人の場所を点々とする帽子のなのよ」

明美は楽しげな口調でそう言った。

明美の言っていることはわかる。