常連客だったあの人とお店の以外な接点を知ってから、タエは毎日あの人が来るのを心待ちにするようになった。

あの人はいつも昔の写真を持って来てくれて、看板を書いてくれた人を見せてくれた。

白黒写真だし劣化もしているけれど、優しそうにほほ笑んだ顔は彼によく似ていた。

その写真の中には、昔タエを助けてくれたお店の亭主の姿もあって、タエは胸の奥がジンジン痛くなるのを感じた。

タエを助けてくれた亭主はもういないけれど、助けてくれたタエはまだこうして店の手伝いができている。

タエはすっかり化け狸になってしまったけれど、人間への恩だけは忘れていなかった。

こうして大好きな場所でコツコツとお金を稼ぎ、人と同じように生活することがタエにとって幸せだった。