「このむぎわら帽子の人、ここでプロポーズをされていたんですよ。ボク、歩道から偶然その様子を見てたから、むぎわら帽子を取りに行ったんです。返そうと思ったころにはもうその人はいなくなってて、それからずっとこの帽子は待ちぼうけなんですよ」

旦那さんの話を聞きながら、目の奥がどんどん熱くなっていくのがわかった。

「はい。お姉ちゃん」

少女がむぎわら帽子を差し出してくる。

少女はこの帽子が明美のものだとわかっていたかのように、純粋な瞳で明美を見つめている。