帽子のことは聞けなかったけれど、そろそろ行かなきゃ。

そう思った時だった。女性が明美の気持ちを察したように、明美の手を掴んで引き止めたのだ。

「もう少しだけ、お話しませんか?」

女性の申し出に明美はとまどった。

ほんの少し前に出合ったばかりなのに、長々とこの場にいたら邪魔になるに違いない。