それは昔、自分がこの砂浜でプロポーズされた時に風に乗って飛んで行ってしまった帽子にそくりだったのだ。

あれは海の方へ飛ばされてしまったし、仮に拾われていたとしてもこれほど綺麗に保存されているとも思えなかった。

でも……似ている。

ボンヤリとその場に立ち尽くしていた明美は少女の鳴き声にハッと我に返った。

母親の方へ視線を向けると急いでこちらへ向かっているのが見えた。