「ありがとうございます!」

走って来た少年が明美へ向けて頭を下げた。

「どういたしまして」

少年に帽子を渡すと「和斗君ありがとう!」と、少女が言った。

その声に、少年の顔が真っ赤になる。

きっと、少女のことが好きなのだろう。

「がんばってね」

明美は少女の元へ戻ろうとする少年へ向けて、小さく耳打ちをした。

少年はパッと振り返ると、満面の笑みを浮かべて「うん!」と、元気よく返事をしたのだった。