「よう、来たぜ」

「森屋さん……!」


 庭もプレオープンに合わせて完成した。

 窓からは色とりどりの花が咲き誇っているのが見える。

 気のせいか、昔よりさらに華やかになっているようだった。


 功労者の森屋さんはいつものつなぎ服ではなく、おめかししてジャケットを着てやってきた。

 ちらちらと玄関脇の桃花先生の絵を見ているのに、わたしと青司くんは思わず顔を見合わせる。


 そうこうしていると、紫織さんたちもやってきた。


「来たわよー、真白ちゃん、青司くん!」

「紫織さん! それに大貫のおばあさんも」

「このたびはおめでとうございます……」


 菫(すみれ)ちゃんに大きな花かごを頂いてしまった。

 さっそくカウンターに置いて、空いている席にご案内する。


「盛況ねえ~、真白ちゃん」

「はい、予想していたよりたくさん来ていただけて嬉しい限りです」

「まあ、オープンしたらもうちょっと落ち着くと思うけど。これも、ウチの宣伝が良すぎたせいかしらね」

「まったくです。紫織さん、ありがとうございます」

「冗談、よ」


 紫織さんにウインクされたけど、わたしはときょとんとする。

 だって、事実だ。

 喫茶店のチラシを新聞折り込みにしたから、これだけの人が集まったのだ。

 紫織さんの言う通り、オープンしたらまた変わるのかもしれないけれど、まったく人が来ないよりは良かったと思った。


「あ、こら、菫! すいません……」

「いや……」


 菫ちゃんはあれから森屋さんがお気に入りになってしまったのか、今もわざわざ森屋さんの隣に行って、絵を描いたりしている。

 紫織さんの旦那さん、学(がく)さんが申し訳なさそうに頭を下げるのを森屋さんもどう返していいかわからないようだった。


「ほらほら、真白! 次の持って行って~!」

「はーい」