気が付くともうバイト先に行かなくてはならない時間だった。
「いけない。早く行かないと……」
立ち上がったそのとき、ちょうどスマホの着信音が鳴った。
青司くんからかと思ったら、違った。
それは紅里(あかり)からのメールだった。
『真白、話があるの。今日空いてる時間ある?』
いきなり用件を伝えて来るなんてよっぽどだ。
どうしたんだろう。
いつもはお互いの近況を報告し合ったりするくらいなのに。なにか重要な話があるのだろうか。
『うん。バイトが終わってからで、いいかな?』
『いいよ。じゃあ終わり次第、駅前の公園で待ってるから。また連絡して』
駅前の、公園?
え、どういうこと? 電話で話すんじゃなくって? 実際に会う、って……。
だって今、紅里は東京で働いていて。あっちで一人暮らしをしているはずじゃ……?
地元に帰ってくるのは年に数回、お盆や正月のときぐらいなのに。
本当にいったいどうしたんだろう。
「え? まさか。紅里、帰ってきてるの……?」
わたしは動揺する心を必死で抑えつけながら、バイトに行く準備をはじめた。
※ ※ ※ ※ ※
その日はあまり仕事に身が入らなかったけれど、どうにか一日をやり終えた。
タイムカードを切って、店を出る。
駅前の公園へは自転車でわずか数分の距離だ。
なんだか……ペダルをこいでいても胸がどきどきしてなんだか落ち着かない。
いい報告だといい。
でも、なんとなく正反対の気がする。
加輪辺駅まで来ると、すぐ南にある公園へと向かった。
ここには家の前のような小さな川が流れていて、遊水地みたいなとこもある。わりと広い公園だ。
駅前はロータリーしかないため、待ち合わせはみんなこの公園内と決まっていた。
自転車で入っていくと、すぐ手前のベンチに紅里が座っている。
「あ、紅里」
「真白……」
声をかけると紅里はすぐに立ち上がって手を振ってくれた。
でもその表情はどことなく暗い。
「どうしたの? いつ、戻ってきたの?」
「……そのことについて、話があって」
「あ、うん」
わたしはベンチの側に自転車を停めると、紅里の横に座った。
傾いた日が紅里の顔に影を落としている。
「あのね、あたし……」
「うん」
「実は……半月前に仕事を辞めてたんだ」
「いけない。早く行かないと……」
立ち上がったそのとき、ちょうどスマホの着信音が鳴った。
青司くんからかと思ったら、違った。
それは紅里(あかり)からのメールだった。
『真白、話があるの。今日空いてる時間ある?』
いきなり用件を伝えて来るなんてよっぽどだ。
どうしたんだろう。
いつもはお互いの近況を報告し合ったりするくらいなのに。なにか重要な話があるのだろうか。
『うん。バイトが終わってからで、いいかな?』
『いいよ。じゃあ終わり次第、駅前の公園で待ってるから。また連絡して』
駅前の、公園?
え、どういうこと? 電話で話すんじゃなくって? 実際に会う、って……。
だって今、紅里は東京で働いていて。あっちで一人暮らしをしているはずじゃ……?
地元に帰ってくるのは年に数回、お盆や正月のときぐらいなのに。
本当にいったいどうしたんだろう。
「え? まさか。紅里、帰ってきてるの……?」
わたしは動揺する心を必死で抑えつけながら、バイトに行く準備をはじめた。
※ ※ ※ ※ ※
その日はあまり仕事に身が入らなかったけれど、どうにか一日をやり終えた。
タイムカードを切って、店を出る。
駅前の公園へは自転車でわずか数分の距離だ。
なんだか……ペダルをこいでいても胸がどきどきしてなんだか落ち着かない。
いい報告だといい。
でも、なんとなく正反対の気がする。
加輪辺駅まで来ると、すぐ南にある公園へと向かった。
ここには家の前のような小さな川が流れていて、遊水地みたいなとこもある。わりと広い公園だ。
駅前はロータリーしかないため、待ち合わせはみんなこの公園内と決まっていた。
自転車で入っていくと、すぐ手前のベンチに紅里が座っている。
「あ、紅里」
「真白……」
声をかけると紅里はすぐに立ち上がって手を振ってくれた。
でもその表情はどことなく暗い。
「どうしたの? いつ、戻ってきたの?」
「……そのことについて、話があって」
「あ、うん」
わたしはベンチの側に自転車を停めると、紅里の横に座った。
傾いた日が紅里の顔に影を落としている。
「あのね、あたし……」
「うん」
「実は……半月前に仕事を辞めてたんだ」