吾輩は猫である。名乗っている名は、”クロ”という。目の前に居る男が、吾輩の毛並みを見て付けた名前だ。安直だが、偽名として考えれば丁度よい。吾輩の真命は知られてはダメだ。真命が知られば、世界を滅ぼす力が顕現してしまう。
しかし、まだ幼体の我は、保護する下僕が必要になる。我が、本来の力を取り戻すまで、我を守る存在が必要になる。我を守る代わりに、我の能力の一端を貸し与えることができる。
我の直感が、先程から怖いくらいに鳴り響いている。
まもなく、我の守護者が現れる。一人なのかもしれない、複数なのかもしれない。我は、我の直感を信じる。直感を信じなくて、何を信じると言うのだ。
そこは寂れた神社だ。
俺は、何かに導かれるままに、神社の境内に入った。できる大人である俺は、しっかりとマナーを守る。鳥居の前で頭をしっかりと下げる。俺は、自分の直感を疑わない。以前も、この神社で直感に従い、裏に回った時に、黒い物体を捕獲した。それを、筋の者に見せたら500の値を付けた。俺は、500では安いと交渉を行ったが、最終的に、600で落ち着いた。1回の凌ぎとしては十分な額だ。
話が横道にそれてしまったが、今は一人だ。友と呼べる者たちは居るが、旅立ってしまった。俺の近くには、誰も残っていない。皆と同じ行動を取るのは、スマートではない。俺は、俺のやりたいことができればいい。
今は、根城に帰るわけにはいかない。根城に凶暴な雌が俺の持っているスキルを狙っている。俺は、スキルを奪われるわけには行かない。直感を信じて、寂れた神社に来た。
神社に足を踏み入れると、俺にしかわからないだろう。俺にだけ感じる波動で、俺を呼んでいる声がする。周りには誰も居ない。しかし、確かに俺を呼んでいる。俺の特殊能力を見抜いて呼んでいるようだ。俺の直感に訴えかけている。
俺は、俺の直感を信じて、神社の裏側に回る。やはり、俺の直感は素晴らしい。間違っていなかった。
「お前が俺を呼んだのか?」
我に気がつくとは、この人間は只者ではない。
この者が、我の直感が告げている者で間違いはないだろう。
”にゃ!(我が守護者よ。我の側に来て跪け。)”
「お前が、俺の眷属に連なる者なのか?」
”にゃぁ!!(我の出した手を握って、我の下僕になることを受け入れろ)”
「おぉ!やはり、俺の直感は間違っていなかった。お前が俺の眷属だ。眷属になったからには、名前が必要だ。真命は、他に聞かれると問題になるだろう。そうだ・・・。お前は、今日から”クロ”と名乗ることを許そう。クロ。漆黒で闇色の毛を持つ者よ。今は、雌伏の時だ」
”ふにゃ!(我の下僕よ。レを守れ。抱きかかえて、安全な場所に移動しろ。我を狙う天からの使者が来る前に、移動を開始せよ。今はまだ勝てない。我の力が戻り、力の開放が行えるようになるまで、我を守ることを許そう。我の直感でお前を守ろう。我の下僕になったからには、我の権能である直感が使える。権能を使って、危険を回避せよ)”
「クロ!黒の眷属が俺たちを狙っている。引くぞ。俺も、黒も、万全の状態ではない。闇の従属神の力を使う俺とは相性が悪い」
”ふぎゃ!にゃにゃ!(やはり、我の直感は正しかった。我を狙う天の者たちが来ているぞ!黒い翼は堕天だ。我の天敵だ)”
「行くぞ!クロ!クロの眷属を振り切るぞ!」
”にゃにゃにゃ!(下僕を、我を守って撤退だ!)”
俺の直感は正しかった。
俺は、念願だった眷属を得られた。眷属の眠っている力が発揮できるはずだ。俺の邪眼が、眷属を正しく見抜いている。天敵である黒の眷属ではない。俺と同じ闇の眷属に連なるものだ。
「クロ。今日は、ここで休もう。糧になるものと、身を隠しながら温める物が必要になるだろう」
”にゃ!(我が下僕よ。我は能力を使いすぎた。目を閉じて、体力の回復を行う)”
我の直感は正しかった。
我の下僕は優秀だ。安全な寝床を確保した。それだけでも、称賛に値するが、下僕は我の糧と温かい毛皮までも用意してきた。体力が回復して目を開ければ、糧が目の前に用意してある。食したことがない美味なる糧だ。それだけではない。寝床は、安全に配慮して、扉が付けられている。我の安全nために、毛皮を周りに敷き詰めている。
体力が回復してきた。目を開けると、眷属が居ない。辺りも暗くなっている。
我は眷属を呼んだ。すぐに、眷属は明かりとともに駆けつけた。わかっているかのように、飲み物を差し出してくる。
眷属は、テーブルに向って何かを見ていた。
我は知っている。あれは、秘められた能力を開花するトレーニングだ。我の下僕は、今の力を過信せずに、我のちからを使わないで、我に使える力を身に着けようとしている。邪魔をしてはダメだと思うが、下僕の状況を確認しておくのも、主の勤めだろう。
それに、我の直感が、あれば下僕の訓練を見ておくのが大切なことだと教えられる。
俺の眷属は、起き出すと出してあった糧を食べた。疲れているのかしれない。俺が現れる前にも、クロを眷属にしようとした物たちが居ただろう。俺と違って、一般の者たちだろう。そうでなければ、あれだけ特殊な波動を放つ選ばれた眷属であるクロを見逃すわけがない。
俺は、導かれるままに書類に目を落とす。俺の眷属であるクロが手伝いを申し出た。俺の権能である直感を、クロも使えるようだ。問題をつぎつぎと解決していく・・・。
俺は、眷属のクロを使い、俺が抱えている諸問題を解決する。俺の直感を使えば、容易に片がつくが眷属であるクロが、俺の持つエクスカリバーに興味があるようだ。俺の直感が、クロにエクスカリバーを渡せば、問題解決をクロができると訴えている。
我を呼んだのは、お前だ。
俺を呼んだのは、お前だ。
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「英二!宿題は終わったのか?!夏休みだからって、いつまでも遊んでいると、父さんに怒られるぞ!」
「子猫を拾ってきたのもわかっているからね。あとで、父さんにお願いしてきなさい。猫に食べさせた刺し身は、英二の夕飯から減らすからね!」
「バカ英二!私の毛布をどこに隠した!明日からのキャンプで必要になる!怒らないから、正直に言いなさい!」