「うん。」
「彼女、やっと報われたんだなぁ。お前もずっと好きだったし、万々歳じゃん。」
「ほんとうに、」
「ん?」
「本当に、そう思う?」
声が震えていた。そうだろう。だってお前、昔からずっと弱虫の泣き虫だったもんなぁ。

「彼女が望んだんだろ。俺にそれを聞くのは間違ってる。信じればいいと思うよ。彼女程一途な女性を知らないしな。」

琥珀色の瞳に、薄く膜が張っている。それでも目は逸らさないで、俺をじっと捉えていた。本当に。昔っから弱虫で、泣き虫で。それでも泣くことを恥じたりしない、素直な人間だった。

「怖いんだ。彼女を置いていくのが怖い。ずっと、ずっと側にいたい。」
そうだろうなぁ。そうだろう。なんて残酷だろうなぁ。残酷過ぎる。
こんなに誰かを愛してるのに、誰かを愛する世界の美しさを知ってるのに。

男が結婚する。式は一週間後。
そしてその式から一週間後が、男の命日になる。