不恰好な紅葉を頬に抱え、帰路に着いた。

一歩踏み出す度に不気味な悲鳴をあげる階段と、錆び付きだらけの壁が淋しい、俺の住処。

申し訳程度に備え付けられた郵便受けには、請求書や明細書、チラシと近所の居酒屋のクーポン。
それらの中に潜んだ、何処か輝かしい純白の封筒。

『×× ×××様』

見慣れない美しい文字だった。差出人を確認し、自然と祝福の言葉が吐き出される。
見計らったようにバックポケットの中でマナーモードの携帯が振動し、此方に喋らせる間も無く、懐かしい声が聞こえた。

「仕事お疲れ様。招待状が届いたと思うから連絡しました。今から会えそう?」

相変わらず、自由な男だった。携帯の向こう側で聞こえる音が最寄駅のアナウンスだと気付くと、郵便受けからクーポンだけを取り出し、道を戻った