「あれ、沙弥じゃん!」

「沙弥ちゃん......!」


しばらくボーッとしていると、ドアの方から明るい声が聞こえてきた。

あたしは笑顔になってくるりと振り向く。


このクラス──兎月学園1年C組で“さや”は、南沙弥(みなみ さや)のひとりだけ。

つまり、あたししかいないんだもん。



「まなみん、涼子ちん、おはよー!」


近づいてくる友達ふたりに、元気いっぱい大きく手を振った。



山岸愛実(やまぎし まなみ)と、咲本涼子(さきもと りょうこ)。

小学生から一緒のあたしたちが仲良くなったのは、中学3年の時だった。

もともと涼子ちんとまなみんは仲良しだったんだけど、あたしとまなみんが出席番号の関係で前後の席になって。

それをきっかけに、3人でいることが多くなったのよね。


「久々」


アーモンド型の目が印象的なまなみんは、クールビューティーって言葉がぴったりな美人さん。

パーマがかかったセミロングの茶髪で、長い前髪を左右に垂らしているため、形のいい眉がばっちりと見えている。


媚びない、曲げない、流されない。

これが昔からのモットーらしい。

そういうまなみんのさばさばしたところが、あたしは好きなのよね。


そして──。


「おはよう、沙弥ちゃん」


パッツン前髪がキュートな、涼子ちん。

ふんわりとした黒髪に、いつもオシャレなカチューシャをつけている。

肌が真っ白なのは生まれつきらしく、どんなに日焼けしてもすぐ元に戻っちゃうんだって。


まさに、大和撫子。

涼子ちんのおっとりした性格には、いつも癒されてる。