「っ!?」


コツン。


叫び声に振り向いたその直後、何かが額にぶっかって、地面に落ちた。


「ったぁ~」


ちょっと、なんなのよいったい。


驚いて声を上げながら、地面に視線を運ぶ。

そこにあったのは、白い……。


「紙ヒコーキ?」


右手でひょいと拾い上げる。

すると、「あー! それ俺のー!」と持ち主らしい男の子がこっちへ駆けてきた。


「悪ぃ、地味ナ……じゃなくて、み、南さん!」


彼はそう言うと、あたしの手から奪うように紙ヒコーキを取り、速やかに去っていった。


……何あれ、超感じ悪。

人にぶつけておいてあの態度はないでしょ?


必死で無表情を保つも、内心ムッとする。


「お前、ヤベーな」

「よりによって地味ナミさんとこ飛ばすとか、マジウケるし」

「ちょっ、わざとじゃねぇって」



“地味ナミさん”


苗字が南(みなみ)のあたしは、極一部の男子からそんなあだ名で呼ばれてるらしい。



きっちり編み込んだおさげ頭。


目にかかった重たい前髪。


分厚い細フレームメガネ。



今どき珍しい、そんな格好をしているから。


だけど辞めるつもりはない。

言いたければ言えばいい。


誰になんと言われようと、あたしにはこうする必要があるんだもん。



あたしはフンッと窓の外へ視線を戻した。