「もう一度訊く。沙弥、お前は本気でアイドルを辞めるつもりなのか」


流れた雫を拭った時、訊ねてきた修平。

私は迷わず答える。


「うん。そう──」


“そうだよ”

言いかけた声を、低い声にかき消された。


「黙れ。俺は、南沙弥に訊いてるんだ」

「……っ!?」


意味がわからない。


「私、南沙弥だよ」

「いや、違うな」

「なっ」

「少なくとも、俺の知ってる南沙弥は、そんな甘ったれた考えの奴じゃない」


……なによ。

何が言いたいっていうのよ。

あたしはあたし。

そんなこと言われたって──。


「アイドルになるのが、お前の夢だっただろ」

「……っ」



その瞬間、あたしの中に何かが駆け巡った。