「日野っち、どういうこと!」


振り返ると、その姿はどこにもなかった。


なんで。

なんで、あたしをここへ。


混乱する脳に、修平の声が響く。


「沙弥、話がある」

「な、何?」


──怖い。

突如襲ってきた感情に、あたしは後ずさりをする。


「アイドル、辞めるのか」

「……っ!?」


どうして、それを。

あまりに驚いて、声も出なかった。


「日野さんからメールで聞いたんだ。何があったのか、全部。お前が、アイドルを辞める気だってこともな」


日野っちが……。


そうか。それで日野っち、あたしをここに連れてきたんだ。

修平に、あたしと別れるように、説得させるために。