「行きますよ」

「えっ?」


驚いているうちに、カチャッとシートベルトを外す音が聞こえた。

何がなんだかわからないあたしは、きょろきょろと視線を動かす。

そんな中、日野っちは涼しい顔つきで外へ出た。


「沙弥さん」


座席に座り込んだ時、隣のドアが開けられ。

あたしは、日野っちに引っ張り出されてしまった。



「ちょっと……!」


放課後とはいえ、校舎の中にはまだ人がたくさん。

だというのに、日野っちは平然とした様子で廊下を進んでいく。

一言も発さず、あたしの手を引いて。


気づいてないんだろうか……。


「日野っち、目立ってるよ」


小声で教えてあげるも、日野っちは足を止めない。


どこへ行くの?

いったい、なんなの?

全くもって、答えが見いだせない。


そして、階段をいくつか上った先。

ようやく日野っちが足を止めた。