「あ、まなみん」

「『あ、まなみん』じゃないわよ。さっきから呼びかけても全然返事ないし。……何かあったの?」

「そうよ、沙弥ちゃんどうしちゃったの?」


まなみんに続き、涼子ちんが眉をハの字に垂らした。


学校についてから、あたしはずっとこうだった。

ぼんやりとして、いつしか意識が飛んでいる。

それも、薄暗い──今日の空みたいな、世界へと。



「実は──」


“修平とのことで”


言おうとして、やめた。

代わりに、あたしはできる限りの笑顔でこう口にする。


「ううん、やっぱりなんでもない」


本当は、誰かにこの悩みを打ち明けたかった。

打ち明けて、どうにか胸の苦しみを解いてくれないかと願ったりもした。

でも、ふたりに迷惑はかけられない。

あたしの、大切な親友なんだもん。


そう思ったから。



「「うそね(よ)」」

「……っ!?」


ビクッと身体が跳ねた。