「それでは」

「ありがとう……」


家に帰ると、真っ先に自分の部屋へ駆け込んだ。

電気もつけず、薄暗い闇の中に立ち尽くす。

じめっとした雰囲気に、次第に呑み込まれていって。


──ドン。


肩からずり落ちたカバンが、床を鳴らした。


つい数時間前までは、この部屋で修平と……。


初めてのお家デート。

二人きりで、楽しくて、ドキドキして。

幸せそのものだった。


「……なんでっ」


あれは夢だったのかな。

現実じゃ、なかったのかなぁ。


魔法が解けたあとみたいに、変わり果てたこの景色。

おんなじ場所だとは、少しも思えない。