『いーーやーー! 絶対、いやぁーーーっ!』


中学3年の夏。

なんの前触れもなく切り出された“その話”に、あたしはひどく声を荒らげた。


“あなたの通う高校はもう決まってます”?

しかも、修平(しゅうへい)とは別の学校ですってぇ?


そんなの、絶対ありえない!



『自分の進路くらい、自分で決めさせてよ!』

『悪いですが、これがウチの方針なので』

『修平と同じ高校じゃなきゃヤダ!』

『無理です。そもそも、あなたの頭脳では……』


頭脳では、なんなのよ?


『日野(ひの)っちの意地悪!』


ぷくっと頬を膨らませたあたしは、スーツ姿の彼を鋭く睨みつける。

しかし日野っちはというと、怯むどころか呆れた顔をして。


『はぁ……』


わざとらしく、盛大に溜め息をついてみせた。


むぅっ。

あたしだって負けないんだから!


『ケチ! わからず屋! 堅物メガネ星人!』


ポカポカと腕を殴りながら、不満をぶつける。


『あたしは兎月学園(とげつがくえん)に通うのー!』

『沙弥さ──』

『特進は無理でも、普通クラスなら入れるでしょ?』

『わがまま言わずに、言うことを聞いてください』


『フンッ』


誰が聞くもんですか!

修平とあたしを引き裂こうったって、そうはいかないからね!