「愛のムチなの!」


きゃーっ。

そっと両手で頬を押さえると、目の前のふたりは刹那にして頭を抱えた。


「だめだ、完全に吉良様に洗脳されちゃってるよこの子……!」

「嗚呼っ、沙弥ちゃん……」


え、何?

ちょっとふざけて言ってみたつもりだったんだけど……。

あたし、そんなにおかしなこと言った?


嘆く彼女たちに目を丸くする。


“吉良様”は、まなみんが勝手につけた修平のあだ名で。

『世界征服が似合う男ナンバーワンだから』ってことは知ってるけど……。

うーん。

洗脳って、なんのことだろ?


不思議に思って唸っていると、張り付けられたような笑顔のまなみんに、肩を叩かれた。


「まあ、頑張って」

「……うん?」


とりあえず、返事だけしておいた。


その後すぐ予鈴が鳴って。

まなみんと涼子ちんは、自分の席へと戻っていった。