「大丈夫?」


そう声をかけてきたのは、涼子ちんだった。


「何が?」


けれどあたしは何のことかわからなくて、首を傾げる。


頭の上にハテナを飛ばしていると、重たい溜め息混じりの声が耳に届いた。


「はぁーっ」


ふと顔を向け、すぐに理解。

まなみんの呆れた声だ。


「“何が?”ってあんた、あんだけ冷たくされたこともう忘れちゃったわけ?」


あー、なるほど。

どうやら二人とも、さっきあたしが修平に打ちのめされた時のことを言ってるみたいだ。


「そんなの忘れるわけないよ」


すっごく悲しくかったもん。


冷たい眼が槍のように胸を貫いて。

消えゆく後ろ姿に切なくなって。


さっきまで、全身がたまらない苦しみに包まれていたんだから。


……でも。



「でも、あれはね……?」

「「あれは?」」