躊躇いもなく落された言葉に、急に目の前が真っ暗になった。


あたし。

市川歩武に……キス、されちゃったの?


うそだ。

まさか。

そんなわけ。

だって、脚本では寸止めで。


信じられない。

本当に信じられない、のに。



……いやだ。

冷たい海に突き落とされたように、次々と体温が奪われていく。


なんで……。

修平……っ。



「あ、沙弥ちゃん!」



ダッと駆け出す。


無意識に。

考えもなく。

赴くままに。


あたしはそれを必死で拭いながら、足を動かし続ける。



「ハァッ、ハァ……ッ!」



ただ、


“消えてしまいたい”


そんな感情だけが、この時あたしの心で激しく暴れていた。