「……っ!?」

「カーット!」


スタジオに響く、大木戸監督の声。

その声とともに、まわりの空気も一気に緩む。


「お疲れさまでしたー!」

「休憩してから、もうワンテイク撮ろうか」

「はいっ!」


だけど。

あたしはそんな声も聞こえてこずに、ただ硬直する。


──なんか今、唇に……?


ううん。

違う。


きっと気のせ──。


「ごめん」


……え?

ボーッとするあたし。

覗き込んできた市川歩武が、その時悪戯に笑う。


「本当に、キスしちゃった」


キ、ス……?