あぅっ……。

胸の奥で何かが疼きだす。


「修平好きっ!」

「おい沙弥、離れろ!」


嬉しさが爆発してぎゅうっと抱きついたあたしを、修平は力づくで剥がそうとする。

でも絶対、離してあげない。


「ヤダヤダ〜。いいで──」

「沙弥さん」


げ。

この声は、日野っち……!


「何よ」

「“何よ”じゃありません。ここがどこだかわかってないんですか?」

「わかってるよー。スタジオだもーん」

「なら早く離れなさい。修平くんが困ってるでしょう」


あたしはぷくっと頬を膨らます。


「もしかして日野っち、修平に嫉妬してるの〜?」

「はいはい。それより、ちゃんと市川さんのところへ、あいさつに行ったんでしょうね?」


うぐっ。

一瞬にして、現実に引き戻された。


市川さん……。

紛れもない、市川歩武のことだ。

つまり今日のお仕事は、例のCM撮影というわけ。


あーあ、せっかく相手役のことは考えないようにして、幸せに浸ってたのに。