勇也と康平の出会いは高校生活初日だった。
 女子は昔ながらのデザインに捻りのないセーラー服を、男子は学ランを着ていた。
 勇也は同じクラスの康平に興味を持った。
 康平を初めて見た瞬間、勇也の脳裏で何かが弾けたのだ。
 それが何かわからなくて、勇也はクラス全員に壁を作る康平に唯一気さくに声をかけつつ、観察するようになった。
 康平は生きるのが下手だった。
 愛想よくすれば、康平はクラスでもそれなりの地位につける容姿をしていた。体育の運動神経もよく、勉強もできるようだった。
 けれど、康平は不愛想であり続けた。
 そして、誰ともつるもうとしなかった。
 早退、遅刻、無断欠席は当たり前だった。
 康平の良い噂は一つも聞かないが、悪い噂は毎日のように聞くことができた。
 休み時間のたびに一人きりな康平は、狼に憧れる子犬のようだった。
 強引に康平と会話しながら、勇也は康平に惹かれ続ける理由に気づいた。康平は絶好の被写体だったのだ。
 勇也はカメラ小僧だ。
 だが、今まで人を被写体にすることはあまりなかった。
 唯一の例外が、同級生で違うクラスの幼馴染である朱美だ。だが、いざ撮影を始めると、幼馴染として朱美を見てしまうため、撮った写真は作品というより個人のアルバムに収めて楽しむ趣味範囲の仕上がりになる。
 康平はアンバランスな人間だ。拒絶と甘え、正反対のものを九対一で持ち合わせていた。自分の弱さを隠すのに必死で、すべてのものに牙を剥きだし、心を閉ざしているようだった。
(さて、どう手懐けるか)
 難しそうな問題を前に、勇也は朱美の力を借りることにした。