「……」

もう何周目になるかわからない見直しの間、あの時の記憶がまた頭を支配していた。
いかんいかん。集中しなければ。
現在受けている科目は英語で、ミスはなさそうである。
最後の確認を終えたタイミングで、英語終了のチャイム。
うん、見落としがなければ満点回答のはずだ。
最後は数学だ、気を引き締めてかかろう。
そう思っていると貴基が声をかけてきた。

「おーうジゲン。どうだったー?」
「英語はそうだね、多分100点かな。貴基はどうだった?」
「100点かよ、すっげえな。オレはまあ、85くらいじゃねえの?」
「頑張ってんじゃん、貴基も」
「悪気がないのはわかるが、それは嫌味にしか聞こえんぞ。しっかしお前、このままの勢いなら本当になれそうだな、生徒会長に」
「ああ。そのために今日まで頑張って来たからね」
「生徒会、入りたいんだもんな。頑張れよ」
「うん、頑張るよ」
「最後は数学だな。ベストを尽くそうぜ……って、おいジゲン大丈夫か?顔色悪いけど」
「ちょっと最近疲れがたまってるからね。まあこれで終わりだし、なんとかもたせるさ」
「おう。オレのノート見せてやったんだし、絶対100点取れよな!」

そう言って貴基が席に戻る。
ちなみに貴基がノートを見せてくれたというのは、僕が中間テストの一週間ほど前に休んだことがあったからだ。
今までの人生で経験したことのない勉強時間の多さに、僕の体が耐えきれなくなったのである。
母が看病してくれたので一日しか休まずに済んだが、その日の分は誰かのノートを写させてもらうしかなかった。
貴基が見せてくれて助かった。
持つべきものは友とはよく言ったものである。