「あんたが夢宮慈眼くんかいな。お初に」
「ああ。初めまして」

トラやんがまっすぐに僕の瞳を見てくるので、思わず目をそらしてしまう。
どうやら初対面でも物怖じしないタイプのようだ。

「貴基から聞いたで。慈眼くんも、一位狙っとるんやってな?」
「そうだよ」
「ほな、ライバルやな」

そうか、トラやんも生徒会長を狙っているのか。
となれば確かに今回最大のライバルとなるのはトラやんだろう。
なにせトラやんは、入学してから全てのテストで学年一位を取っているのだ。
今回も当然、この男に勝てなければ学年トップはあり得ないだろう。
だけど―

「僕だって当然、負ける気はない。学年一位を取って生徒会長になるのは、僕だ」

そうだ。越えなければならない壁なら、越えてみせる。
僕だって伊達にずっと勉強してきたわけじゃない。
この一か月の間のほとんどを勉強に費やしてきたといっても過言ではないのだ。
僕の人生の中で最も努力をしてきたのだ。
その努力に自分で報いるためにも、今回のテストは負けられない。

「ほう、言うやないか。っと、もう時間やな。ほなまたどこかで、慈眼くん」

そう言って自分の教室へ行くトラやん。
去り際の瞳には、確かに闘志がともっていた。
『負けない』という強い意思表示。
それを受けて僕も闘志を燃やす。
絶対に、一位を取ってみせる。

こうして、波乱の中間試験の火蓋が切って落とされたのだった。