金曜日、朝。
僕がいつも通りの時間に登校すると、貴基(たかき)が誰かと話しているのが見えた。
貴基は一年の時からのクラスメイトで、僕の親友のような存在だ。
相談に乗ってくれたり、ご飯を食べに行ったり、他愛のないことを話したり。
一緒にいて苦にならない、むしろ安心するというのが貴基の印象である。
瞳を見ても、いつも明るい貴基の感情はぶれることなく一貫していた。
だからこそ貴基とは安心して付き合うことができた。
「おーい貴基、おはよう」
「おージゲン、おはよう。今日はついに中間試験だな!」
「ああ。全力で頑張るつもりだよ」
「おう!おおそうだ。中間試験と言えば、トラやんと話してみたらどうだ!まだ話したことなかっただろ」
そうして貴基は僕と彼とを向かい合わせた。
なるほど、貴基と話しているのはトラやんだったのか。
トラやんというのは、隣のクラスに所属する天(てん)願対(がんたい)我(が)のことである。
一星学園のこの学年において、毎回試験トップの成績をたたき出す人物だ。
ちなみにトラやんというのは、トラやんとその友人との以下のような会話からできたニックネームらしい。
「対我ってさー、名前カタカナにして伸ばし棒入れたらタイガーじゃん。超かっこいいな!」
「そうか?別段かっこいいとも思わへんが」
「これからは学年一位の獅子って呼んでいいか!?」
「タイガーは獅子やのうてトラやん。あかんやろ中学生にもなってタイガーとライオンの和訳ができてへんのは」
「トラやん!良いニックネームだな!今度からそう呼ぶよ!」
「話聞いとるか?」
……この会話だけ聞くと、トラやんは割と気さくな人物なのかもしれない。
僕はクラスが同じになったことはないからよく知らないのだ。