「今回は、いや今回も、か?俺の勝ちやな。しっかし二位て、慈眼くんもすごいやんか」
「……」
「それだけ本気やったっちゅうことやんな。まあそれは俺も同じやったが。えーとまあ、ひょっとしたら何かに期待してるかも知らんけど、俺は生徒会長を譲る気はないで」
はっきりと。
まっすぐに、視線をこちらに向けてトラやんは言った。
「ちょっとだけ、俺の話をしよか。あんたも自分がどんな奴に負けたんかは知りたいやろうしな」
そんな風に、聞きようによっては僕を煽るような発言をするトラやん。
それでも、トラやんに何も言い返す気力がわかなかったのは多分、トラやんの曇りない瞳のせいだったのだろう。
純粋な感情だけを込めた、迷いのない瞳。
自分が生徒会長になるということに、微塵の疑問も抱いていない。
何よりもすごいのは、まるでその感情を隠そうともしないところだろう。
初対面の人物に対して、ためらいが一切ない。
自分の意思に絶対の自信を持っているという風だった。
そんな中学生離れした雰囲気をトラやんは放っている。
しかしその雰囲気には見覚えがある気がした。
少し考えて、答えにたどり着く。
そうか、似ているんだトラやんは。
あの時の女の子に。