「答え配るぞー」
そうだ、答えを確認すれば間違いかどうかはっきりする。
配られた答えを勢いよく裏返し、証明問題の解答を確認した。
そこには、僕の解答とほんの少しだけ違う答えが記されていた。
わずかな語句の違いである。
〈てにをは〉がやや違うというような、ささいな違い。
だが確かに、その部分が違えば文の意味は異なってしまう。
微妙な違いであれど、その違いが持つ意味は大きかった。
問題はなぜそんな間違えを自分がしてしまったのかということだ。
授業の解答をそのまま書いたのなら、それがそのまま解答になっているはずなのに。
一体なぜ……?
なんとなく、心の奥では感づいてはいた。
見せてもらったノートの答えが間違っている。
それが何を意味するか、そんなことは考えるまでもなく明らかだ。
ただ、認めたくなかった。
その後のテストの解説の時間は、『なぜこうなったんだ』という気持ちが僕を支配し続けていた。
チャイムが鳴って、授業が終わった。
僕は自分でも驚くくらいの早足で、貴基の席に向かった。
貴基の席の前に着き、できるだけ平静を保ちながら言う。
「貴基……なんで?」
僕は手に持っていた答案を貴基に見せた。
そこにはチェックの付いた解答が記されている。
「なんで、間違った解答を僕に写させたんだ!?」
あまりの剣幕に、貴基が驚いたように肩を震わせた。
貴基は無言のまま、自分の解答を僕に見せてくる。
そこには、僕と全く同じところを間違えた解答があった。