その時の僕は、どこかで不安を感じ取っていたのかもしれない。
視界に映る先生の瞳が、わずかに曇って見えたこと。
それが何を意味するのか。
その時は考えなかった。
ただ、自分が本気で望んだ結果を掴み取れると思いたかった。
だから―

「惜しかったな。97点だ、夢宮」

先生からテストと共にそんな言葉を送られて。
頭が真っ白になった。

「どうした?そんなにショックだったのか?」

呆然と立ち尽くす僕を見て、先生がそんな風に声をかけた。
97点……?
98点でトラやんと同点だったのだから、つまり。
僕の、負け?

なぜ?どうして?何を間違えた?僕の負け僕は生徒会長になれないなんでなんでなんで―
真っ白になった僕の思考を塗りつぶすように、様々な感情が僕を支配する。

「夢宮?本当に大丈夫か?」

しかし、先生の声で我に返った。

「すいません、大丈夫です」

今はとりあえず自分の席に戻らねば。
クラスメイトたちも僕を見てざわざわしている。
疑問、不安、同情、憐憫。
そういった感情が、クラスメイトの瞳に浮かんでいる。
僕の嫌いな空気が、僕のせいでクラスを取り巻いてしまっていた。

席に戻って、急いで答案を確認する。
なんだ?何を間違えたんだ、僕は?
見直しをしなかった表の問題を間違えてしまったんだろうか。
そう思って表を確認してみると、そこには全て丸が付いていた。
じゃあ、裏…?
裏を見てみると、赤で修正が入っているのがすぐに見つかった。
チェックの横には、-3点と書いてある。
しかし不思議なことに、何度見てもそこが間違えているように思えない。
問題は僕が休んでいるときに出た問題そのまま。
解答も、その時のノートに書かれた文字を一言一句書き写した。
なら、なぜ間違っている?
この時点で僕は、先生の採点ミスなのではないかと思い始めていた。