「テスト返すぞー、席着けー」

数学の先生が教室に入って来た。
いよいよ、最後のテスト返しである。

「よし、席戻るわ。大丈夫だジゲン。お前ならトラやんにも勝てるって!」
「ああ。……遅れたけど、ノート見せてくれてありがとな。今度ご飯でもおごるよ」
「マジか、持つべきものは気前の良い友達だぜ。んじゃ」

それはこっちのセリフだよ、貴基。
本当に、感謝してる。
その言葉は、さすがに恥ずかしいから飲み込んだけれど。

テスト返しが始まり、もうすぐ僕が呼ばれる。
さすがに直前にもなるといささか緊張する。
大丈夫のはずだ。
見直しこそできなかったが、違和感のある問題はなかった。
証明問題だって、貴基のおかげで解けたはずだ。
完璧、100点のはずだ。
トラやんに勝って、僕が一位を取るんだ。

そんなことを、呪文のように自分に言い聞かせていた。
すると―

「夢宮」

名前が呼ばれた。
どきどきしながら席を立つ。
心臓が早鐘を打っているのがわかる。
こんな緊張をした経験は今までない。
人生最大級のプレッシャーが僕を襲う。
そんな状態のまま先生の所へ向かった。

僕は大丈夫、僕は大丈夫。
生徒会長になる、生徒会長になる。
なる、なる、なる!