それからの僕は、あの女の子のことばかり考えるようになっていた。
自分の人生の中で見た、どの瞳よりも美しい瞳をもつ女の子。
透き通った、純粋な心を持った謎の少女。
どうすればそんな瞳になるのかを、僕は聞いてみたかった。
だから僕は、あの子と会うための方法を考えた。
まずは、あの子がどのクラスに所属しているのかを突き止めようとした。
突き止めるといっても、友達がほとんどいない僕のとれる行動は限られていた。
すなわち、総当たり作戦である。
地道に一クラスずつ確認していって、同じ顔の子を見つけようといった方法だった。
だがこれはうまくはいかなかった。
なんせ二年生だけでも700人近くいるのである。
その全てのクラスを見て人を探すのは簡単なことではなかったのだ。
結局どれだけクラスを探しても、あの子は見つからなかった。
全てのクラスを見たはずなのに、それらしい人物はいなかった。
そうなってしまうと、僕の取れる人探しの方法は行き詰ってしまう。
貴基に『気になる女の子を探すのを手伝って欲しい』と聞くのは憚られた。
だけどそれでも諦めきれず、他の方法を僕は考えた。
諦めきれずに考え抜いた結果、たどり着いた答えが生徒会長特権だった。
役員任命に関する生徒会長特権。
生徒会長になった生徒は、生徒会役員を自らが選ぶことになる。
そして生徒会長は、役員に任命する生徒を決めるために全校生徒の情報を手に入れることができるという特権があるのだ。
情報は学校内のものに限り、先生に申請することで閲覧できる。要は名前に顔写真、クラスや部活動などである。
生徒会長になりさえすれば、あの子がどのクラスに所属しているかもわかるし、何より生徒会役員に指名することができる。
あの子に会って話をしたいという願いが叶うどころか、これからの一年間を生徒会の一員として共にすることができるのだ。
つまり。
生徒会長になり、あの子と再会して、一緒に生徒会としての活動を共にする。
それこそが僕の人生の中で初めてと言える、本気で叶えたいと思った願いだった。
あとは、ひたすら勉強をするだけだった。
自分の使える全ての時間を費やして勉強した。
自分よりも勉強している人などいないと、自信をもって言えるほどにやったつもりだった。
それくらい一生懸命に頑張れたのは、あの女の子との思い出を空想したからだ。
あの子のことを考えるほどに、やる気がわくのが感じられた。
あの子との再会を夢想するたびに胸が高鳴った。
だからこそ、もっと話してみたかった。あの子について知りたいと思った。
彼女に対する熱い思い。
それは。その感情は。
ひょっとしたら、恋なのかもしれなかった。