疲労と眠気が寄り添うテスト最終科目の数学は、佳境に差し掛かっていた。
表の問題は終わり、後は裏の証明問題が残っている。
今のところはよくできていると思う。
少なくとも解けていない問題は一問もない。
僕は勢いよく裏面をめくった。
そこにあったのは、見覚えのある問題だった。
そう、貴基が写させてくれたノートの問題だ。

「なんかよー、先生が言うにはだいたいそのまんまテストに出すらしいぜー?」

あの時の貴基の言葉を思い出す。
しかしこれは、だいたいどころかまるっきり同じ問題だ。
一言一句違わず、僕が休んでいた時の授業に出た証明問題。
もしもノートを見せてもらっていなければ、僕は解けなかっただろう難解な問。
しかし内容が全く同じなら、間違えるはずもない。

だが、そう上手くはいかなかった。
ことが起こったのは、証明を解き終わるほんの少し前のことだった。
あと三行で書き終わる、と思った僕は気を緩めてしまったのだ。
安心してしまったのだろう。
なんせ試験終了までにまだ30分もあるのだ。
後の時間は全て見直しに使うことができる。
だから、このテストは大丈夫だと思って気を抜いたのが良くなかった。

唐突に鉛筆を走らせる右手が重くなり―
意識が遠のいていくのを感じた。
いわゆる、気絶するというやつだろう。
最後の証明問題を書き終わらないまま、僕は意識を失ってしまった。