彼女の事実を知ったとたん、次々と謎が紐解かれていった。

そういえば、初めて会ったのは、デパートの屋上で開催されたミニライブの後。放課後、下駄箱で会ったのはMIX-CHUのDVD発売日。高総体で会ったのもMIX-CHUの昔の曲がカラオケ配信された時だ。他にもMIX-CHUクリアファイルがコンビニで配布された時とか、深夜のミコ生配信があった翌日の寝不足とか、マミーナちゃんがSNSでお勧めしていた映画とか、MIX-CHUの曲が採用された音ゲーとか、ポナミンの好物であるメロンパンとか。……てかよく考えたらライブイベントの帰りにカフェで会ったわ。

「オタ仲間がクラスにいて嬉しかったんだ、私。でも、お互いミクチューオタであること公表してないから、偶然ってことにしておいた」

俺とあんずさんはMIX-CHUオタクとしての基本行動をとっていたため、鉢合わせることが多かった。そういうことだった。

「でも現場で会ったことないよね」
「私は相田くん見かけたことあるよ。相田くんライブで前の方にいるから会わないだけ」

聞くと、ステージ近くは押しつぶされそうで怖いから、いつも後ろの方でステージをガン見しているとのこと。チェキも一時間以上待ちのマミーナちゃんではなく、一番列が少ないポナミンと撮っているらしい。

「私、髪型とかメイクとか、ポナミンに寄せてるとこあるかも。メイク苦手だし自分では上手くできないけど。でも、私ってメイク映えする顔なんんだって。えへへ」

ポナミンっぽさ出てるよ、と伝えると、顔に手を当て本気で照れだした。
しかし、うわ~可愛いと見とれている時間はなかった。開場時間は刻々と近づいている。

「そうだ。あんずさんは整理番号どのあたり?」
「えっと、私は」

お互いチケットを見せ合う。ありがたいことに整理番号は近い。これは本当に偶然だね、と言って二人で笑った。

「じゃあ一緒に見ない? せっかくだし前の方でマミーナちゃん応援しよ」

そう伝えると、今日一番の笑顔で彼女は笑った。