キャッキャとさわぐ女子や、やめてよー等とじゃれあっている男女を横目にいつもの友達(もちろん男子)とゲームやアニメの話に花を咲かせる。これがさえない男子高生である俺の日常。
「絶対確率しぼられてる! いくらガチャ回しても出ねー」
「あー、でも新キャラいまいちじゃね?」
教室の隅にて友達とあーだーこーだ話している途中、目の前をクラスメイトが数名通り過ぎ、風とともに視界が開かれた。自然と教室の真ん中あたりに視線がいく。
目に入ったのは、山吹あんずさん。この前雑貨屋で遭遇した女の子。
今日のあんずさんは、校則を順守した制服姿に、ぱっつん前髪&ツインテール、すっぴん気味な地味顔。
同じようなジャンルの女子と楽しそうに話をしていて、外部の生徒を寄せ付けないような空気をまとっている。
「でさー今月課金額まじやばくて親に超怒られた……ってお前聞いてる?」
「…………」
「相田うぉい!」
「うへぇ!」
突然、友達に大声で呼ばれ、変な声が出てしまった。友達はメガネを光らせ、俺の顔を舐めるように見てくる。やべ、何か感づかれたか? いや別にやましいことは何もない。あんずさんとは校外で偶然出会って、ほんのちょっとだけ話しただけの関係だ。
「お前、今あのへんの女子見てたべ。うわぁセクハラだ」
「なんでだよ! 別にぼーっとしてただけ」
「どれ? どれがお前の推し?」
「だから違うってばよ!」
自然と俺らの声ボリュームが上がる。女子たちから怪訝そうな目が向けられてしまう。
あんずさんの目も俺に向けられ、慌てて視線を逸らした。うーわ目が合ったかも。変に思われたかも。
――相田くん、ちょっと話しただけでわたしに惚れちゃった? 確かに女子に免疫なさそうだしね。プ。
やめろ違う。全然違う。確かにリアル女子との接触はスーパーレアだが、それだけで惚れるほどバカではいない。しかも俺のタイプはアイドルグループ『MIX-CHU(略してミクチュー)』の推し、マミーナちゃんだ。地味タイプなあんずさんとは全然違う。
超絶早口な心の声に押しつぶされそうになったが、チャイムとともに先生が教室に入ってきたため、難を逃れることができた。ふぅ。