もちろん席は隣同士。予告編が次々流れ、ブザーが鳴りあたりは暗くなる。序盤こそはどぎまぎしていたが、次第に映画に引き込まれる。あんずさんが横にいるのも忘れて感動の涙をぽろりと流してしまった。本編が終わった瞬間、急いで目をこすりごまかす。
恐る恐るあんずさんを見ると、彼女はボロボロに泣いていて必死に鼻水をかんでいた。
SNSでの評判通り、とてもいい映画だった。
「努力すれば報われるとは限らないけど、努力した分だけ自分は変われるんだよね。めちゃくちゃ刺さった」
映画館を出てもあんずさんは涙目のまま。このまま解散するのも悪いと思いカフェに入った。こういう時はおごらなきゃいけないのか、でも『おごるよ』なんて歯の浮いたセリフを言えるわけもなく、普通に各自支払いとなった。申し訳ない。
あんずさんは興奮した様子で映画の感想を語り続けている。俺も「結局は自分次第って感じだよね」等と軽く感想を挟むと、さらにあんずさんも語り出す。
なんだこれ。楽しいじゃねーか。
「実は、尊敬する人がSNSでこの映画推してて。それで見に来たんだけど。相田くんと見れてよかった」
「うん。俺も……」
「じゃあ、また学校でね」
また学校でね、か。学校でも普通に絡んでいいのだろうか。
いや無理だな。友達に変に勘づかれたら嫌だし。きっとあんずさんもまわりの友達に変に思われるはずだ。迷惑かけたくない。
次の偶然が、早く来てほしい。