「お前が会いたい相手も黄泉の国に帰れないどころか、永劫に転生ができなくなる。だから、どんなに離れたくなくても決まりは破るな」

「茜が……生まれ変われなくなる……」

 私の願望が茜の未来を奪うかもしれない。そんなこと、私の一存で決めていいことじゃない。

できるならずっと一緒にいたけれど、茜の幸せを思えば、決まりは絶対に守らなくちゃいけないことだってわかる。

 私が茜と会えるのは一時間だけ。少ないけれど、私にとっては奇跡のような時間だ。

 あの日みたいに一方的に自分の意見を押しつけるんじゃなく、茜の気持ちをちゃんと聞いてあげたい。

 そう思っていると、那岐さんの視線が私からずれる。


「現に帰れなかった人間と幽霊がいるからな」


 終わったとばかり思っていた話は信じられない方向に進んで、私は「え?」と那岐さんの顔を凝視する。でも彼は、私の隣にいる水月くんを見ていた。

「いい例がここにいるよ」

 那岐さんの視線に気づいて、水月くんが苦笑しながら手を挙げた。