土曜日、待ち合わせ時間より僕は、二十分早く待ち合わせ場所に着いてしまった。待ち合わせ場所に加奈はまだいなかった。いないと分かった僕は、ホッとした。 何故なら、加奈を待たせてはいけないからだ。待ち合わせ時間まで何をしようと思って、無意識にケータイに電源を入れたり、 消したりして時間を潰していた。
そうしていたら「おーい」と右側から声が聞こえたので「なんだろう」と思い振り返ったら笑顔で手を振って走ってくる加奈の姿が見えた。「待った?」と加奈は聞いてきた。だから僕は、「全然待ってないよ」と答えた。 「ごめんね、待たせて」と加奈は言った。 「いやだから、全然待ってないよ」と僕は、言った。言ってから僕は、自分の言葉がちゃんと加奈の耳に届いているのかと疑問に思った。待ってないと答えたはずなのにもう一度聞いてくるなんて。
「じゃあ、駅に向かって行こうか」と加奈は言ってきた。「そうだね」と僕は、答えた。 「加奈は、電車の時間、間に合う?」と聞いてきた。それを僕に聞いてきた加奈に対してこう返した。「いや、電車の時間に間に合うように待ち合わせしているからこの時間に待ち合わせしたんだよ。」と僕は、言った。 「あーそうだった。ごめんね」と加奈は言った。 僕は、「別に謝らなくてもいいのに、なんで謝るの?なんも悪くないよ」と言った。 「ごめん、ごめん」と加奈はもう一度謝った。 もう一回「謝らなくてもいいよ」と言おうとしたが辞めた。言ったら結局また謝るだけだからだ。 「それより今日の加奈、大丈夫かな?」と思って駅に向かっていた。すると加奈が急に倒れた。「加奈、加奈、大丈夫か?、しっかりしろ」と僕は、焦りながら言った。でも返事をしてくれない、だから僕は、急いで電話して救急車を呼んだ。 近くにある電柱に書かれていた街区表示板を見て居場所を言った。「救急隊員はその場所に行くまで結構時間がかかる」と言っていたので、加奈をおんぶして日陰の方まで連れて行った。しばらくして、救急車が来て、担架を使って加奈を救急車の中へ運び僕も、その救急車の中へと入って病院に行き、病院に着いてから、加奈は、心臓蘇生を行なった。僕は、心臓蘇生する部屋には入ることができなかったので、外にある待ち合い席のソファーに腰を下ろして待っていた。ちょっとしてから加奈の母が来た。そして事情は全部説明した。

待つこと三十分、心臓蘇生する部屋の扉が開いて、僕は、病院の先生に「加奈は、無事なのですか」と聞いた。すると、病院の先生は、下に俯いて、暗い顔をしながら、首をゆっくりと振った。その表情を見て、助からなかったというのが一気に体全身に伝わってきた。頭が真っ白になり、ショックで何も言葉が出てこない。それは、まるで時が止まったみたいな感じだ。隣で加奈の母は、涙を流すばかりだ。と言っている僕も、気がついたら目の涙袋の部分に涙が溜まっていってその溜まった涙をゆっくりとまぶたを閉じて流し出した。 僕は、真っ白になった頭の中から少しずつ真っ白じゃなくなっていて、心の中で「昨日の僕だったら、こんなこと想像できただろうか。数時間前まで、元気だったはずの女の子が急に倒れて死ぬだなんて。」と思った。