7月初め。
まだ梅雨の名残が残る曇天。
今日は、渚が東京にやって来る日。

私は最寄りの駅まで1人で向かい、駅で到着を待った。

美樹おばさんのクリニックまで来てもらうことの考えたけれど、いきなり二人っきりで会うのが怖かった。
突然黙っていなくなった私のことを渚がどれだけ怒っているかと思うと、人が多いところの方が安心できる。
美樹おばさんも、みのりさんも、一緒に行こうと言ってくれたけれど、断わって来た。
自分のとった行動の責任はとらなくてはいけない。
ちゃんと渚と向き合わないと。

それでも不安な私は、約束の時間よりも30分も早く駅に着いた。
到着する人の波を見ながら、渚にどんな顔をして会おうと考えていた。

あー、緊張する。

・・・5分。

・・・10分。

・・・15分。

待つって、こんなに時間がたたないものだったっけ。

・・・20分。

...25分。

そろそろ、渚の乗った電車が到着する。
私は駅の待合に座り、改札を出てくる人達を見つめた。