日曜日。
今日は朝から乳児院がザワザワしている。
職員や宿泊している私達も総出で、朝から大掃除。
子供達も何かを感じ取っているようで、落ち着きがない。

「ゆう君と、たくみく君の用意はできた?」
みのりさんが保育士さんに聞く。
「もうすぐです」
「荷物は出ているだけね?」
「はい。大きいものは先に送りましたから」
「そう」
みのりさん自身も落ち着かない様子。

「もうすぐ見えますよ」
豊さんも院長室を出てきた。
やだ、なんだか私まで緊張してきた。

今日、乳児院で暮らす2人の男の子が里子に出される。
1人はゆう君。
1歳の男の子。先月誕生日を迎えたばかりで、やっと歩けるようになったばかりの赤ちゃん。
もう1人はたくみ君。
3歳の男の子。明るくてやんちゃな乳児院のアイドルのような子だった。
2人とも母親の育児放棄によりここに来た子。

このままここにいるよりは、里親の元で幸せに暮らした方がいい。
それは分かっている。
でも、やはり寂しい。
私自身里親の元で何不自由なく暮らしたけれど、やはり育ててもらった引け目のようなものはいつまで経っても消えない。

「樹里亜さん。お見送りに行来ましょう」
愛弓ちゃんに声をかけられ、私も玄関へと向かった。