その日から、私のシェルター生活が始まった。
妊娠の経過は産婦人科医である美樹おばさんに診てもらい、自分の病気については乳児院に提携している近くの医院に薬の処方と検査をお願いした。

「樹里亜さん。朝の薬は飲んだ?」
今日もみのりさんが声をかけてくれる。
「はい。飲みました」

自分の母さんに言われたら、「も-、飲んだわよ」って言うところだろうけれど、ここでは素直に返事ができる。

「愛弓ちゃんも、今日は受診だから早く用意してね」
「はーい」
幾分朝食をもてあましながら、愛弓ちゃんも返事をした。

愛弓ちゃんは14歳の女の子。
小さい頃からお母さんは留守がちで、いつもひとりで育ったらしい。
その性か朝からきちんと食事を取る習慣がなく、彼女にとっては朝から食べるお味噌汁とご飯が苦痛なんだそう。

「残していいですか?」
かなり頑張っていた愛弓ちゃんが、みのりさんに助けを求めた。
「仕方ないわね」
ほぼ半分ほど食べた朝食を見ながら、みのりさんがOKを出した。
本当に、親子みたい。

「ごちそうさまでした」
2人で声を合わせた。