東京に着いた私は真っ直ぐ美樹おばさんの家に向かった。

とりあえず入りなさいと家の中に入れてもらい、私は美樹おばさんと向き合って座った。

「で、何があったの?」

えっと、一体どこから話せばいいんだろう。
渚のことを話すわけにもいかないし、
妊娠のことは黙っていても分かってしまう。

うーん。
と、悩んでいると、

プルル プルル。
おばさん家の電話鳴った。

「もしもし・・・うん。・・・うん。分かった。来たら知らせるから」
電話を切ると、私を見る。

「大樹からよ。樹里亜が来たら知らせて欲しいって。あなた、何したの?」
何と言われても・・・
「ただの兄弟喧嘩ではなさそうね。何なの?」
おばさんの目が真っ直ぐ私を見ている。

「実は・・・妊娠、したんです」
「はああ?」
おばさんは口を開けたまま、私を凝視した。

「妊娠って・・・結婚は?」
「・・・しません」
「しませんって、結婚できないような人との間に子供が出来たって事?」
「まあ、そう言うことです」
「ふざけないで!命を何だと思っているの。それでも医者なの」
珍しく、怒られた。

おばさんの言うことは正論で、私は言い返せなかった。

美樹おばさんは40代の独身産婦人科医。
今は不妊治療を専門にクリニックを開いている。
普段、子供が欲しくてもできない人達の苦労を見ているおばさんだからこそ、「できてしまった」と逃げ込んできた私に怒ったんだと思う。