「明日になったらカルテのロックは外すらしいから。そうなれば分かるだろう。それに、月子先生が入院させずに帰したって事は、重症ではないんだと思う」
「なるほど」
納得して相づちを打つ、渚。

「随分冷静だな」
つい言ってしまった。
一緒に暮らしている彼女がいなくなれば、もっと動揺してもおかしくないだろう。

「彼女を、樹里亜を信じていますから。きっと、考えがあるんだと思います」
「平気なのか?」
「もちろん、腹は立ってます。帰ってきたら、黙って許す気はありませんが、今焦ってもどうしようもありませんから」
なるほど、彼らしい。

愛想はないが、真面目で几帳面な仕事ぶりはみんなから信頼されている。
正直、俺から見ても信用出来る奴だ。
だからこそ、信じられない。

「同棲なんて、一番似合わない奴だと思っていたがな」
ガッカリしたよ。と含みを持たせて、俺は渚を見た。
「すみません。俺自身もなぜこうなったのか分かりません。ただ、樹里亜のことを大切に思っていました。そのことは信じてください。もう、言い訳はしません。こうなった以上、病院にはいられなくなるだろうとは覚悟していますから」
随分と大袈裟なことを言う。
それが彼らしいと言えばそれまでだが・・・