ここしばらく、体調不良が続いている樹里亜。
無理して明るく振る舞っている姿を見ながら、いつか倒れるんじゃないかと内心ハラハラしていた。

今日は朝から診察の予定。
いつもなら勤務を抜けて受診に行くのに、今日はわざわざ休みをとって行くらしい。
貧血の悪化を理由に1週間のドクヘリ禁止も出ているし、樹里亜自身も気が気じゃないはずだ。
大丈夫なんだろうか?
時間的にも午前の診察は終わっているはずだから、結果は出ているはずなんだが・・・

「すみません。部長いらっしゃいますか?」
突然声をかけられた。

脳外の竹浦先生。樹里亜の兄さんだ。

「今日は出張で、1日不在ですが」
「そうですか・・・困ったなあ」
「どうかしました?」
「樹里亜と連絡が取れないんですよ」
ええ?
でも、何で部長?
樹里亜と連絡が取れないからって、部長を探す理由が分からない。

「君、樹里亜と親しいんだよね?」
「まあ。同期ですから」
それが?
「樹里亜の携帯にかけてみてくれない?」
はあ?
自分でかければいいだろう。
それに、仕事中だぞ。
俺はいささか無愛想になって、
「そんなに、急ぎですか?」
「ああ。急ぐ」
俺以上に不機嫌そうだ。

俺はしかたなく、樹里亜の携帯にかけた。
一体何があったって言うんだ。

しかし、樹里亜は出なかった。

「すみません。繋がらないみたいです」
「ありがとう。すまなかったね。他の手を考えるから」
竹浦先生はそう言って立ち去った。