ガラガラ。
「母さん」
ノックもせずに病室のドアを開けた。
駆け寄って、とにかく顔を見たい。

「樹里亜、心配しなくても大丈夫だから」
母さんはベットで体を起こしていた。

はあー。
本当だ。元気そう。

「よかった」
心底ホッとした。
もし母さんに何かあれば、私は一生後悔したと思う。
そのくらい心配だった。

「樹里亜、来たのか?」
大樹が病室に入ってきた。
「遅くなってごめん」
「仕事だ。気にするな」
「うん、ありがとう。それで、容体はどうなの?」
「少し貧血が進んでいるけれど、心配はないだろう。まあ、検査も兼ねて2,3日休んで帰ると良いよ。今夜は救急病棟に泊まって、明日から血液内科で検査をしよう」
「わかった」

今日の血液検査の結果を見せてもらったけれど、緊急入院するほど悪くはない。
きっと疲れが出て、目眩がしたのね。
色々心労も多いはずだから・・・

「こんばんは」
渚が病室に入ってきた。

「今夜の救急病棟担当の高橋です。お変わりありませんか?」
静かに声をかけながら、診察をしていく。
「ええ。大丈夫です」
「少しでも変わったことがあれば、我慢せずに言ってください」
「はい。ありがとうございます」
母さんもにこやかに答えている。

「今日は誰か泊まられますか?」
回診についてきた看護師が私と大地を見る。
「私が泊まります」
「そうですか。樹里先生のお布団がいるようなら、おっしゃってください。ご用意しますので」
「ありがとうございます」