午後、私はヘリの担当。
近隣の病院からの搬送依頼で、10代の少年を連れて帰る。
事故による外傷のために、難しい手術が必要となりうちの病院への受け入れとなった。

私とフライトナースを乗せたヘリは20分ほど飛んで病院へ着き、引き継ぎをして患者と共に帰路につく。
飛び立ったときには患者の状態は比較的安定していた。
しかし、ヘリの上昇と共に呼吸が浅くなり、血圧も下がりだした。

そんな中、なぜか私は母さんのことが頭をよぎってしまった。
今は目の前の患者に集中しなくてはいけないのに、気圧のせいか少し頭がボーッとする。
フーッと気が遠くなった。

「先生ッ」
看護師の焦った声。

「ああ。ごめんなさい」
慌てて点滴の指示を出し、酸素を追加して事なきを得た。