2年後。


私は二十歳になった。

お姉ちゃんも無事大学を終え、春には帰ってくる予定。


「樹里亜、病院への挨拶は済ませたの?」

母さんが心配そうに声をかける。


「昨日行ってきた」


「お姉ちゃん、引っ越しはいつ?それまでに部屋の私物を片付けるけれど」

「うんん。まだいいわ」

ん?

「そんなに荷物も多くないし、急がなくて大丈夫」

「ふーん」


「樹里亜、本当に救命に行くのか?」

「うん」

兄さんはとても心配そう。

まあね、どう見てもお姉ちゃんには小児科か皮膚科が似合う。

救命でバリバリってイメージじゃないのに


「大丈夫よ」

みんなの心配を察してお姉ちゃんは強がってみせた。


「やってみてダメなら変わればいいだろう」

父さんはいつもお姉ちゃんに甘い。


「私だって一応医者だから、救急で頑張るわよ」

と、ぷっと頬を膨らませてお姉ちゃんが笑った。


何だろう、明るすぎる。

不安を感じながらも、私は家族みんなが上機嫌なことを喜んだ。


数ヶ月後に嵐を迎えるとも知らず。