「気をつけて帰りなさい」

「はい」


「ちゃんと、家に帰るんだぞ」


念を押され、

私は先生の顔を見た。


山口先生は他の先生達とは違う気がする。

本気で関わってくれそうな気が・・・


私は試してみたくなった。



「先生」

数メートル離れた先生に、声をかける。


「何?」


ふー。

軽く息を吐いて、


「どこか連れて行ってください。どこでもいいから遊びに、連れて行って」


ちょっと甘えた風に言ってみた。


「何言っているんだ」

やはりそう言うわね。


でも、

「ダメならいいです。他を当たります」


「他ってお前」

先生の表情が渋くなる。



「ほら、街には若い女の子が好きなおじさんが多いから。援交でもすればすぐにお金になるし」

言いながら、私はなんてバカなんだろうと思っていた。


でも、私には後悔する時間はなかった。


ツカツカと近づく先生。


私の目の前まで来て、

ジーッと私の顔を見て、


パンッ。


平手で私の頬を叩いた。



そして、

「サイテーだな」

冷たく言うと、先生は背中を向けて歩き出す。



残された私は、ボロボロと泣いてしまった。

恥ずかしくて、情けなくて。

私にも分かっている。

「じゃあ、遊びに行こうか」なんて言われたらもっと最悪だった。

「バカッ」って怒られて、「冗談ですよ」って笑って、そうなることを望んでいた。



ああああ、私はなんてバカなんだ。


この後行くところのなくなった私は家に帰った。

母さんに随分叱られたけれど、それ以上に悲しくて、久しぶりにベットで泣いた。